AI 活用の第一歩 — 小さな Pi 5 から自前の GPU サーバーへ

2026年10月7日 (更新: 2026年10月11日) | 今村 文宣(行政書士)

AI 活用の第一歩 — 小さな Pi 5 から自前の GPU サーバーへ

仕事で AI を使う第一歩は、大きな投資ではありません。小さく始めて記録の型を作り、AI の出す答えを人が確かめる形を先に決めることです。当事務所は、手のひらに載るコンピュータ Raspberry Pi 5 から始め、その後、自前の GPU サーバーを組み立てました。

本記事は、「デジタル業務とは何か」で予告したシリーズの1本目です。当事務所が実際にたどった順に、何を作り、何につまずき、何を学んだかをお伝えします。

小さく始める — Raspberry Pi 5

当事務所の AI 活用は、Raspberry Pi 5 を組み立てたところから始まりました。

Raspberry Pi 5 の基板に部品を付け、ケースに収める前

手のひらに載る基板に部品を付けてケースに収め、モニターにつなぐと、画面にデスクトップが映りました。小さな基板が、一台のコンピュータとして動き始めた瞬間です。

組み立てた Raspberry Pi 5 を画面につないで、初めてデスクトップが映った

Raspberry Pi 5 は、家庭・産業・教育などに向けて作られた、小型で安価なコンピュータです。性能は高くありませんが、常に電源を入れておき、AI の道具を動かす場所としては十分でした。

Pi の上で最初のころに作ったのが、「Command Room」という AI たちの会議室です。議題を出し、AI が意見を出し、投票し、決まったことをタスクとして残す。その様子を、人が画面から覗けるようにしました。

Command Room の画面。議題・投票・チャット・タスクの欄が並ぶ

AI 同士がどう話を進め、どこで食い違うのかを、人が覗ける窓を先に持ったことが、その後の作り方の土台になりました。

つまずくたびに、決まりを作る

Pi で始めてすぐに、二つのことでつまずきました。

一つは、AI が忘れることです。AI は会話が変わると、前の文脈を覚えていません。昨日決めたことを今日の AI は知らず、同じ議論を何度も繰り返すことになりました。

そこで、始めて1週間ほどで、記録の型を4つ決めました。

  • 時系列の記録: いつ、何をして、どうなったか
  • 追記だけの台帳: 決めたことを消さずに積み重ねる
  • 手順書: 同じ作業を誰がやっても同じ結果になるように
  • 引き継ぎ: 作業を途中で別の AI や翌日の自分に渡すために

この4つの型は、形を変えながら今も使っています。

もう一つは、鍵の扱いです。パスワードのような鍵を、うっかり記録に混ぜてしまったことがありました。すぐに記録を作り直して鍵が紛れ込むのを止める仕組みを入れ、それからは鍵を記録や設定と厳しく分けて扱っています。

小さな規模のうちにつまずいたからこそ、決まりを早く固めることができました。

なぜ自前のサーバーを持つのか

自前の GPU サーバーを持つと、外のサービスに頼らず、手元で AI を動かす仕組みが作れます。

GPU を自前で持つ個人の事務所は、まだ珍しいかもしれません。それでも自前のサーバーを選んだのは、手元で動く AI があれば作れるものが大きく変わるからです。たとえば、次のような仕組みが作れます。

  • 文字の読み取り(OCR)や文章の生成を、手元のサーバーの上で動く AI(ローカル LLM)で行う
  • 外部の AI サービスに文章を渡す前に、個人情報を記号に置き換え、元に戻すのは手元のサーバーの中だけにする
  • AI が作ったものは、出す前に人が確かめる

当事務所は、こうした仕組みを自ら作って動かしています。ただし、仕組みは使い方と組み合わせて初めて意味を持ちます。置き換えが完全だと言えるものでもありません。どこまでを仕組みに任せ、どこからを人が確かめるか。その判断が、AI を使ううえで欠かせなくなります。

GPU サーバーを組み立てる

Pi の次に、GPU サーバーを自分の手で組み立てました。

まだ何も入っていないケース

空のケースに、CPU、メモリ、GPU と、部品を一つずつ組み込んでいきます。手順は ChatGPT をはじめ、いくつもの AI に尋ねながら進めました。部品の挿し方、配線の順番、うまくいかないときに何を見るか。迷ったときは、同じことを複数の AI に聞いて答えを比べました。

ただ、AI が増えれば答えも増え、食い違いも増えます。どの答えを採り、次に何をするかを決めて作業を回す役は、結局、人に残りました。

電源が入り、光るケースの中

部品がそろったその日に組み始め、ケースの中に光がともりました。ところが、そこからが長かったのです。モニターにつないでも設定がうまくいかず、何度もやり直しました。深夜になっても終わらず、朝を迎えたころ、ようやくモニターにデスクトップが映りました。自分で組んだ機械が、一台のサーバーとして動き始めた瞬間です。

組み立てた GPU サーバーを画面につないで、初めてデスクトップが映った

AI は道を示しますが、その道が間違っていることもあります。確かめ、手を動かし、結果に責任を持つのは人だということを、ここで体で覚えました。

AI は間違える。だから、任せきりにしない

AI に任せきりにすると、AI は前提を少しずつ取り違えます。だから、AI の出したものをうのみにせず、人が確かめて直す役を持つ必要があります。

Pi の上の Command Room で AI 同士の話し合いを人が覗けるようにしたのも、決めるのは人だと考えたからです。その後、AI に任せる作業が増えるにつれて、AI の言うとおりに設定を変えて、サーバーが動かなくなったこともありました(この話は次の記事でお伝えしています)。

規則を書けば AI が守る、とは限りません。AI は規則の文字は理解しても、実際の作業でどう当てはめるかを取り違えるからです。AI は間違えるものと考えて、間違いを見つけて直す手順を先に用意しておく。これが、当事務所の AI 活用の軸になりました。

今日できていることと、目指していること

Pi の上で始めた Command Room は、のちに GPU サーバーの上で作り直しました。

GPU サーバーの上で作り直した Command Room。AI たちが会議室に入ってくる

Pi の頃の Command Room は、AI たちのやりとりを人が覗く窓でした。GPU サーバーの上では、様々な AI が、同じサーバーの上で直接一緒に作業できるようになりました。人が覗くだけの会議室から、AI が手を動かす作業場になったということです。

今日では、AI が事務所のサーバーを、人が許した範囲だけで操作できます。このホームページも、このサーバーの上の AI と一緒に作り、運用しています。

目指しているのは、こうした仕組みを日々の仕事に合う形でまとめた、当事務所のアプリ「Daegis」です。Daegis については、シリーズの4本目でお伝えしています。

第一歩で確かめたいこと

これから仕事で AI を使い始める方に、当事務所の経験からお伝えしたいことは次の4つです。

  • 小さく始める: 最初から大きな機材は要りません。手元の小さな環境で、AI が何をし、どこで間違えるかを見ることから始められます
  • 記録の型を先に作る: 何を決め、なぜそうしたかを残す型があれば、AI が変わっても作業が続けられます
  • 鍵を分ける: パスワードのような鍵は、記録や設定と最初から分けて扱います
  • 出す前に人が確かめる: AI の出したものは、人が確かめてから使います。責任を持つのは人です

次の記事では、サーバーの故障から、ホームページの作り替えまで、AI で業務を改善した事例をお伝えしています。

当事務所のサポート

当事務所は、自ら作って動かしてきた経験をもとに、事務所や企業の AI 活用を支援いたします。

  • 始め方の整理: 業務のどこから AI を使うか、どの規模の環境から始めるかを一緒に整理いたします
  • 記録と手順の型づくり: AI と一緒に働くための記録・手順の型を、業務に合わせて作ります
  • 確かめる仕組みの設計: AI の出したものを人が確かめる段取りと、外部の AI に渡す前の置き換えなど、作れる仕組みをご提案いたします

デジタル業務に関するご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。


本記事は、行政書士法第1条の2第2項の趣旨に基づく取組の一環として公開しています。

本記事は2026年10月11日時点の法令・公表情報に基づいています。改正や運用の変更があるため、申請の際は最新の情報をご確認ください。

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