育成就労制度ガイド|2027年4月施行予定の新制度を解説

2026年10月11日 (更新: 2026年10月11日) | 今村 文宣(行政書士)

育成就労制度ガイド|2027年4月施行予定の新制度を解説

育成就労制度は、2027年4月1日に運用が始まる予定の新たな制度です。技能実習制度を発展的に解消し、人手不足分野における人材の育成と確保を目的としています。育成就労の期間は原則3年で、その間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成します。

注意: 育成就労制度は2027年4月1日施行予定です。本記事は、出入国在留管理庁(以下「入管庁」)の「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」、「育成就労制度Q&A」および分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)に基づいています。施行までに運用の詳細が追加・変更される可能性があります。

育成就労制度とは

育成就労制度は、育成就労産業分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的とする制度です(入管庁「育成就労制度の概要」)。根拠は、令和6年6月21日に公布された令和6年法律第60号です。

入管庁は、技能実習制度について「制度目的と実態のかい離や外国人の権利保護等の観点からの課題が指摘されています」と説明しています(育成就労制度Q&A)。育成就労制度は、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、人材の育成・確保を目的として創設されました。

制度の基本構造

項目内容
根拠法出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)
施行日2027年4月1日(予定)
育成就労の期間原則3年(特定技能1号への移行に必要な試験に不合格となった場合、最長1年の範囲内で一定の在留継続を認める方針)
目的特定技能1号水準の人材育成と、人手不足分野の人材確保
受入れ範囲育成就労産業分野(2026年7月時点で17分野)

関係機関

育成就労制度には、以下の機関が関わります(入管庁「育成就労制度の概要」)。

  • 外国人育成就労機構(ESDO): 育成就労計画の認定、実地検査、指導・助言等を行う
  • 監理支援機関: 育成就労外国人と受入れ機関の間の雇用関係の成立のあっせんや、育成就労が適正に実施されているかの監査等を行う(許可制)
  • 育成就労実施者(受入れ機関): 育成就労外国人を雇用し、人材育成を行う企業等
  • 送出機関: 送出国において外国人の募集や事前研修等を行う
  • ハローワーク: 監理支援機関や機構と連携して転籍を支援

在留資格の全体像については「日本のビザ(在留資格)の種類と要件」をご参照ください。

技能実習との5つの違い

育成就労制度は、技能実習制度と以下の5点で大きく異なります。

1. 制度目的の転換

技能実習制度は、技能等の修得等を通じた人材育成による国際貢献を目的とする制度です。これに対し、育成就労制度は、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とします(育成就労制度Q&A)。

2. 本人意向による転籍(転職)の容認

入管庁は、本人の意向による転籍を「技能実習制度では認められなかった」と説明しています(育成就労制度Q&A)。

育成就労制度では、暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等のやむを得ない事情による転籍に加えて、本人の意向による転籍が一定の要件のもとで認められます(詳細は後述)。

3. 監理・保護の仕組みの見直し

技能実習育成就労
監理を行う機関監理団体(許可制)監理支援機関(許可制。許可基準を厳格化)
計画の認定・実地検査外国人技能実習機構外国人育成就労機構(ESDO)

監理支援機関の許可基準は、技能実習制度の監理団体よりも厳格になります。技能実習制度の監理団体も、監理支援機関の許可を受けなければ、育成就労における監理支援事業を行うことはできません(育成就労制度Q&A。許可基準の例は後述)。

送出しについては、二国間取決め(協力覚書。Memorandum of Cooperation、以下「MOC」)の作成や、送出機関に支払う費用が不当に高額にならない仕組みの導入が図られます(後述)。

4. 特定技能への接続の明確化

入管庁は、育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせ、外国人が就労しながらキャリアアップできる制度を構築するとしています(育成就労制度Q&A)。

育成就労(原則3年) → 特定技能1号(原則5年まで) → 特定技能2号(上限なし)

5. 日本語能力の水準の設定

育成就労制度では、日本語能力について次の水準が設けられています(入管庁「育成就労制度の概要」、分野別運用方針の主要な記載事項)。水準は「日本語教育の参照枠」のレベルで示されています。日本語教育の参照枠は、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に基づき、日本語能力の熟達度を A1〜C2 の6段階で示したものです。

段階日本語能力の水準
就労開始前A1相当以上の試験(国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)、日本語能力試験(JLPT)のN5等)の合格、または認定日本語教育機関等によるA1相当の講習(100時間以上)の受講
本人意向の転籍時A1相当から特定技能1号移行時に必要な水準までの範囲で、分野ごとに設定
育成就労終了時・特定技能1号移行時A2相当以上(JFT-Basic、JLPT N4等)。分野によってはより高い水準
特定技能2号分野ごとに設定(入管庁の概要資料の図では B1相当以上(JLPT N3等)の試験)

入国時点で求められる日本語能力の要件はありません。A1相当の試験に合格していない場合は、入国後講習等でA1相当以上の講習を受講します(育成就労制度Q&A)。

対象分野と人数枠

育成就労産業分野(17分野)

育成就労産業分野は、特定技能制度の特定産業分野のうち、就労を通じて技能を修得させることが相当なものです。2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針で定められ、2026年7月時点では次の17分野です(分野別運用方針の主要な記載事項)。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. リネンサプライ
  4. 工業製品製造業
  5. 建設
  6. 造船・舶用工業
  7. 自動車整備
  8. 宿泊
  9. 鉄道
  10. 物流倉庫
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業
  15. 林業
  16. 木材産業
  17. 資源循環

特定技能の19分野のうち、育成就労産業分野として設定がないのは自動車運送業と航空のみです(2026年7月時点)。

受入れ見込数(人数枠)

分野別運用方針において、生産性向上及び国内人材確保を行ってもなお不足する人数に基づき、分野ごとの受入れ見込数が設定されます。この数は受入れの上限数として運用されます。分野ごとの数は、前掲の「分野別運用方針の主要な記載事項」でご確認ください。

転籍(転職)の要件

育成就労制度は、外国人を労働者としてより適切に権利保護する観点から、本人の意向による転籍を一定の要件のもとで認めています。転籍先は、いずれの場合も同一の業務区分内に限られます(育成就労制度Q&A)。

やむを得ない事情による転籍

暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等、やむを得ない事情がある場合の転籍は、技能実習制度から引き続き認められます。

本人の意向による転籍

育成就労制度で新設されたのが、本人の意向による転籍です。入管庁は、要件として次のものを挙げています(育成就労制度Q&A)。

  1. 技能・日本語能力: 分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能(技能検定基礎級等)と日本語能力を修得していること
  2. 転籍制限期間の経過: 直近の育成就労実施者のもとで、分野ごとに1年以上2年以下の範囲で定める転籍制限期間を超えて育成就労を行っていること(1年を超える分野でも、育成就労実施者の判断で1年とすることが可能)
  3. 民間の職業紹介を受けていないこと: 転籍に当たって、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと
  4. 転籍先が優良であること: 転籍先が優良な育成就労実施者であること
  5. 転籍者の割合: 転籍先の育成就労外国人の総数に占める本人意向の転籍者の割合が一定以内であること(3分の1以下。転籍先が大都市圏(指定区域の外)にあり、地方(指定区域内)から受け入れる場合は、その転籍者の割合が6分の1以下)
  6. 転籍元への費用の支払: 転籍先が転籍元に対して一定の金額を支払うこととしていること

転籍の支援体制

転籍にあたっては、ハローワークが監理支援機関および外国人育成就労機構と連携して支援を行います。また、地域協議会を組織して地域の受入環境整備を促進する仕組みも設けられています。

特定技能への移行ルート

育成就労制度は、特定技能1号水準の人材の育成を目的としています。

移行の流れ

育成就労(原則3年) → 試験合格 → 特定技能1号(原則5年まで) → 試験合格 → 特定技能2号(上限なし)

特定技能1号への移行要件

育成就労から特定技能1号に移行するためには、以下の試験に合格する必要があります(育成就労制度Q&A)。

試験内容
技能試験技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験
日本語試験日本語能力A2相当以上の試験(JLPT N4等)

現行の特定技能制度では、技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号への移行に際して技能・日本語の試験が免除されています。育成就労制度では、これらの試験の合格が移行の要件となります。

試験不合格の場合

特定技能1号への移行に必要な試験に不合格となった場合には、最長1年の範囲内で、一定の在留継続が認められる可能性があります(育成就労制度Q&A)。入管庁の概要資料は、これを再受験のための在留継続としています。

育成就労を経ない特定技能1号の取得

育成就労を経ずに外国で試験を受験して特定技能1号で入国することも可能です。

企業側の準備

受入れ機関(育成就労実施者)の義務

育成就労外国人を受け入れる企業は、主に次の義務を負います(入管庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」)。

  • 育成就労計画の作成・認定申請: 育成就労外国人ごとに計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける。計画には育成就労の期間(3年以内)、目標(技能、日本語能力)、内容等を記載
  • 報酬・待遇: 育成就労外国人の報酬の額が、日本人が当該業務に従事する場合の報酬の額と同等以上であること
  • 人材育成の実施: 計画に基づいて技能・日本語能力を育成すること

監理支援機関の変更点

現行の監理団体が育成就労制度に関わる業務を行うためには、新たに監理支援機関の許可を受ける必要があります。許可基準は厳格化され、外部監査人を設置していることや、監理支援事業の実務に従事する常勤の役職員が2人以上であることなどが新たに求められます(育成就労制度Q&A)。

送出機関と二国間取決め(MOC)

育成就労制度では、送出国との間で新たに二国間取決め(MOC)が作成され、原則としてMOCを作成した国からのみ受入れを行います。また、外国人が送出機関に支払う費用が不当に高額にならない仕組みが導入されます(入管庁「育成就労制度の概要」)。

企業が今から行うこと

2027年4月の施行に向けて、受入れ企業は次の準備をご検討ください。

  1. 自社の分野・業務区分が育成就労産業分野に該当するか確認: 17分野と業務区分は、前掲の「分野別運用方針の主要な記載事項」の一覧で確認できます
  2. 監理支援機関の選定: 現在の監理団体が監理支援機関の許可を取得するか確認し、取得しない場合は新たな機関を選定
  3. 育成就労計画の準備: 3年間の人材育成計画の検討
  4. 社内体制の整備: 日本語教育や技能研修の体制を整備
  5. 施行日前の申請: 施行日(2027年4月1日)より前でも、監理支援機関の許可は2026年4月15日から、育成就労計画の認定は2026年9月1日から申請が受け付けられています。申請先と手続の詳細は、外国人技能実習機構が案内しています(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q3・Q6・Q8)

経過措置(技能実習生の扱い)

施行日(2027年4月1日)前後の技能実習生の扱いについて、入管庁は次の経過措置を示しています(入管庁「育成就労制度の概要」、育成就労制度の施行に伴う技能実習の経過措置について)。

施行日前に入国し技能実習を行っている場合

施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている場合は、引き続き技能実習を行うことができます。この場合、技能実習制度のルールが適用されます。

要件を満たせば次の段階の技能実習に移行することも可能です。ただし、技能実習3号への移行については、施行日時点で2号技能実習を1年以上行っている者に限られます。

重要: この場合、技能実習から育成就労に移行することはできません。

施行日前に技能実習計画の認定申請をしている場合

施行日前に技能実習計画の認定の申請をしている場合は、施行日以後に技能実習生として入国できる場合があります。ただし、施行日から3か月以内(2027年6月30日まで)に開始する技能実習計画に限ります。施行日以降に技能実習計画の認定申請は行えません。

施行日前に技能実習を終えて出国している場合

施行日前に既に技能実習を終えて出国している場合は、技能実習生として再度入国することはできません。ただし、技能実習を行っていた期間や職種によっては、育成就労外国人として入国できる場合があります。

特定技能への移行

育成就労制度の運用開始後であっても、当分の間は、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合、特定技能1号に移行することができます(育成就労制度Q&A)。

まとめ

育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材の育成と確保を目的とする制度です。

  • 2027年4月1日施行予定: 技能実習制度を発展的に解消し、育成就労制度が始動
  • 原則3年の育成期間: 特定技能1号水準の技能の育成を目指す
  • 本人意向の転籍: 一定の要件のもとで、同一の業務区分内での転籍が可能に
  • 17分野(2026年7月時点): 特定技能の19分野のうち、自動車運送業と航空を除く
  • 日本語能力: 就労開始前にA1相当、特定技能1号への移行時にA2相当以上
  • 監理支援機関: 監理団体も新たな許可が必要。許可基準を厳格化

当事務所のサポート

AEGIS国際行政書士事務所では、育成就労制度への対応についてのご相談をお受けしています。

  • 制度の確認: 自社の業務が育成就労産業分野・業務区分に当たるか、在籍中の技能実習生に経過措置がどう適用されるかを、入管庁の公表資料に基づいて整理いたします
  • 在留手続のご相談: 育成就労・特定技能に関わる在留手続について、申請取次行政書士がご相談をお受けします

育成就労制度への対応について、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を構成するものではありません。

本記事は2026年10月11日時点の法令・公表情報に基づいています。改正や運用の変更があるため、申請の際は最新の情報をご確認ください。

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