不法就労助長罪とは|企業が知るべきリスクと確認義務
2026年10月11日 (更新: 2026年10月11日) | 今村 文宣(行政書士)
外国人を雇用する企業が在留資格の確認を怠った場合、たとえ不法就労の事実を知らなかったとしても、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)第73条の2に基づく不法就労助長罪に問われる可能性があります。罰則は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科で、2027年4月1日から5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金に引き上げられる予定です。
不法就労助長罪とは
不法就労助長罪とは、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者や、不法就労のあっせんを行った者などを処罰する犯罪です(入管法第73条の2第1項)。
不法就労の3つの類型
出入国在留管理庁(以下「入管庁」)は、不法就労となるのは次の3つの場合であると説明しています(入管庁のリーフレット「外国人を雇用する事業主の皆様へ」)。
1. 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
密入国した人や在留期限の切れた人(いわゆる「オーバーステイ」)、退去強制されることが既に決まっている人が働く場合です。
2. 入管庁から働く許可を受けていないのに働くケース
観光等の短期滞在目的で入国した人や、留学生、難民認定申請中の人などが、許可を受けずに働く場合です。「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の在留資格をもって在留している方は、資格外活動許可を受けていない限り就労できません。
3. 入管庁から認められた範囲を超えて働くケース
就労可能な在留資格を持っていても、認められた範囲を超えて働く場合です。たとえば、外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場・事業所で単純労働者として働く場合や、留学生が許可された時間数を超えて働く場合が該当します。
処罰される行為
不法就労助長罪の対象となるのは、働いた外国人本人ではなく、外国人に不法就労活動をさせた側です。入管法第73条の2第1項は、次の行為を処罰の対象としています。
- 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
- 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
- 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為または前号の行為に関しあっせんした者
さらに、これらの行為を行い、唆し、または助けた者が外国人である場合は、退去強制の対象にもなります(入管法第24条第3号の4)。
罰則
不法就労助長罪の法定刑は、入管法第73条の2第1項に基づき、以下のとおりです。
3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科
令和6年法律第60号による改正で、2027年4月1日から法定刑が5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科に引き上げられる予定です(改正後の入管法第73条の2第1項)。
「知らなかった」だけでは処罰を免れない
入管法第73条の2第2項により、不法就労活動をさせた者は、その外国人の活動が在留資格に応じた活動に属しないこと、資格外活動の許可を受けていないこと、不法滞在者等であることを知らなかったことを理由として処罰を免れることはできません。ただし、過失のないときは、この限りではありません。
入管庁は、「在留カードの導入により在留資格・資格外活動許可の有無等の判別が極めて容易になることに伴い、雇用主が、雇用する外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、そのことについて、在留資格の有無を確認していない等の過失がある場合には処罰を免れません」と説明しています(入管庁「在留管理制度に関するQ&A」Q117)。
その他の関連罰則
不法就労助長罪のほかに、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)にも、外国人の雇用に関する罰則があります。
| 違反内容 | 罰則 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 不法就労助長(雇用・あっせん) | 3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金(併科あり。2027年4月1日から5年以下・500万円以下の予定) | 入管法第73条の2 |
| 外国人雇用状況の届出をしない・虚偽の届出 | 30万円以下の罰金 | 労働施策総合推進法第28条第1項・第50条 |
なお、外国人本人も、許可を受けずに資格外の就労をした場合は処罰の対象となります(入管法第73条。資格外の就労を専ら行っていると明らかに認められる場合は第70条第1項第4号)。後者の場合は退去強制事由にも当たります(入管法第24条第4号イ)。
企業が取るべき確認措置
採用時は在留カードで就労できるかを確かめ、雇用中は在留期間と業務の範囲を管理し、雇入れと離職のときはハローワークに届け出ます。
採用時の確認事項
1. 在留カードの確認(後述の「在留カード確認の具体的方法」を参照)
外国人を雇用する際は、在留カードを提示してもらい、就労の可否を確認してください。入管庁は、特別永住者の方を除き、在留カードを所持していない場合は原則として就労できないとしています。ただし、旅券に後日在留カードを交付する旨の記載がある方、在留期間が3か月以下の方、「外交」「公用」等の在留資格が付与された方は、在留カードを所持していなくても就労できる場合があり、旅券等で確認します(同リーフレット)。
入管庁は、有効な在留カードを所持していれば雇用に問題がないということではなく、顔写真による本人確認のほか、在留資格、在留期間の満了の日、就労制限の有無および資格外活動許可の有無を特に確認するよう求めています(同Q&A Q113)。
2. 就労資格証明書の活用
就労資格証明書(入管法第19条の2)は、外国人の方が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を、出入国在留管理庁長官が証明する文書です。転職により雇用主が変わった外国人の方を採用する場合など、在留資格の範囲内で就労できることを確認する手段として活用できます(入管庁「就労資格証明書交付申請」)。
3. 在留資格と業務内容の整合性確認
在留カードの「在留資格」欄に記載された在留資格と、実際に従事させようとする業務内容が合致しているか確認してください。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人の方に、在留資格に該当しない業務を行わせた場合は不法就労に該当します。
雇用中の管理
1. 在留期間の管理
在留カードに記載された在留期間の満了日を管理し、更新手続が必要な場合は余裕を持って手続を進めるよう促してください。更新の申請をしないまま在留期間を過ぎた方を就労させた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
なお、在留期間の満了日までに更新や変更を申請した方は、満了日までに結果が出なくても、結果が出る時か満了日から2か月を過ぎる日のいずれか早い時まで、それまでの在留資格で在留できます(入管法20条6項・21条4項。在留期間が30日以下の方を除く)。この間は、それまでの在留資格の範囲で働くことができます。申請中であることは、在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請欄」で確かめられます。
2. 資格外活動許可の範囲の遵守
資格外活動許可を得ている外国人の方(留学生のアルバイトなど)については、許可された範囲を超えないよう管理する必要があります。包括許可は1週について28時間以内の活動が対象で、風俗営業等が営まれている営業所での活動などは許可の対象になりません。複数のアルバイト先がある場合は、合計で週28時間以内でなければなりません(入管庁「資格外活動許可について」、「外国人を雇用する事業主の皆様へ」)。
3. 配置転換・業務変更時の確認
社内での配置転換や業務内容の変更を行う場合は、変更後の業務が在留資格の範囲内であるか確認してください。在留資格「技術・人文知識・国際業務」で在留する外国人の方が昇進して経営者となった場合、「経営・管理」への在留資格変更が必要となる場合があります。
派遣・業務委託における注意
外国人の方を派遣社員として受け入れる場合や、業務委託先の外国人労働者を受け入れる場合も、受入れ側の企業が在留資格を確認することをお勧めします。派遣先事業者が、在留資格に該当しない業務に従事させた場合は、派遣先にも不法就労助長罪が成立するおそれがあります。
外国人雇用状況の届出
外国人(特別永住者、在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用する事業主には、労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出が義務づけられています。外国人を雇い入れた場合や外国人が離職した場合は、ハローワークへの届出が必要です。届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金の対象となります(同法第28条第1項・第50条、厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」)。
在留カード確認の具体的方法
在留カードは、在留資格に係る許可の結果として、日本に中長期間在留する外国人の方(中長期在留者)に交付されるカードです(入管庁「在留カードとは?」)。在留カードの確認は、不法就労を防止するための基本的な措置です。
2026年6月14日以降に交付される新しい様式の在留カードでも、「就労制限の有無」と資格外活動許可を受けているときはその旨が券面に記載されます。
確認ポイント1:表面の「就労制限の有無」欄
在留カード表面の「就労制限の有無」欄には、次のような記載があります(入管庁「『在留カード』はどういうカード?」の、雇用するときの確認の項)。
| 記載内容 | 意味 |
|---|---|
| 就労制限なし | 就労内容に制限はありません。身分系の在留資格(「永住者」「日本人の配偶者等」等)が該当します |
| 在留資格に基づく就労活動のみ可 | 在留資格で認められた範囲内の就労のみ可能です |
| 指定書により指定された就労活動のみ可 | 在留資格「特定活動」の方。法務大臣が個々に指定した活動等が記載された指定書の確認が必要です |
| 就労不可 | 原則として雇用できません。ただし裏面の資格外活動許可欄を確認してください |
確認ポイント2:裏面の「資格外活動許可」欄
表面で「就労不可」または「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載されている場合でも、裏面の「資格外活動許可欄」に許可の記載があれば、一定の範囲で就労できます。
主な記載パターンは以下のとおりです。
- 「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」: 複数のアルバイト先がある場合は、合計で週28時間以内
- 「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」: 資格外活動許可書を確認してください
確認ポイント3:在留カードの真正性の確認
入管庁は、近年、券面の偽造技術の精巧化や、有効な在留カード番号を使用した偽変造在留カードの作成事案が発生していると説明しています(入管庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」)。次の方法で真正性を確認してください。
目視による確認:
入管庁の「『在留カード』及び『特別永住者証明書』の見方」は、2026年6月13日以前の様式の在留カードについて、次のような偽変造防止対策を示しています。
- カードを上下方向に傾けると、「MOJ」の文字の周囲の絵柄がピンクからグリーンに変化する
- 銀色のホログラムは、見る角度を90度変えると文字の白黒が反転する
在留カード等番号失効情報照会: 入管庁の「在留カード等番号失効情報照会」で、在留カードの番号と有効期間を入力すると、番号が失効していないか確認できます。ただし、有効な在留カードの番号を使用した偽造在留カードもあるため、番号照会だけでなく、券面の偽変造防止対策もあわせて確認してください(同Q&A Q115)。
在留カード等読取アプリケーション: 入管庁が無料で配布している「在留カード等読取アプリケーション」を使うと、在留カードのICチップに保存された情報を読み取り、券面の記載と見比べることで偽変造の有無を確認できます(同サポートページ)。
偽変造が疑われる在留カードを発見した場合は、最寄りの地方出入国在留管理局または警察へ通報してください(Q&A Q116)。
確認の際の注意事項
- 仮放免許可書の所持者: 仮放免許可は在留資格ではありません。仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受ける活動に従事できない」の条件が付されている場合は就労できません
- 短期滞在: 「短期滞在」の在留資格をもって在留している方は、資格外活動許可を受けていない限り就労できません
- 難民認定申請中の方: 有効な在留カードを所持していない場合や、在留カードに「就労不可」と表示されている場合は雇うことはできません
(同リーフレット)
まとめ: 企業として備えるべきこと
不法就労助長罪は、「知らなかった」ことを理由に処罰を免れることができない犯罪です(過失のないときを除く)。外国人を雇用する企業は、以下の点を改めて確認してください。
- 採用時に在留カードを確認する: 顔写真、在留資格、在留期間の満了の日、就労制限の有無、資格外活動許可の有無
- 在留カードの真正性を確認する: 目視・番号照会・読取アプリの活用
- 在留期間と在留資格の範囲を継続的に管理する: 更新期限、業務内容の整合性
- 外国人雇用状況の届出をハローワークに行う
在留資格制度の全体像については、「在留資格の種類一覧」もあわせてご参照ください。
当事務所のサポート
AEGIS国際行政書士事務所は、申請取次行政書士として、外国人を雇用する企業様からのご相談をお受けしています。
- 在留資格と業務内容の確認: 採用予定の方や在籍中の方の在留資格で、予定している業務に従事できるかを整理いたします
- 在留手続の申請書類の作成・申請取次: 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請・就労資格証明書交付申請などの書類を作成し、出入国在留管理庁への申請を取り次ぎます
外国人の雇用に関する在留資格の確認や申請手続でお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。
本記事は2026年10月11日時点の法令・公表情報に基づいています。改正や運用の変更があるため、申請の際は最新の情報をご確認ください。