スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)とは|2025年10月改正後の要件と東京都での流れ

2026年10月8日 (更新: 2026年10月11日) | 今村 文宣(行政書士)

スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)とは|2025年10月改正後の要件と東京都での流れ

スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)は、経済産業大臣の認定を受けた自治体または民間事業者から事業計画の確認を受けた外国人の方が、在留資格「特定活動」で最長2年間、日本で起業の準備をできる制度です。

2025年10月16日の改正により、準備期間のうちに「事業に使う財産の総額3,000万円以上」と「常勤職員1人以上」の両方を満たす見込みが求められるようになりました。

スタートアップビザとは

スタートアップビザは、在留資格「経営・管理」の要件をまだ満たしていない外国人の方に、要件を整えるための準備期間を認める制度です。正式名称は「外国人起業活動促進事業」で、経済産業省のスタートアップビザのページが制度の窓口になっています。

通常、外国人の方が日本で会社を経営するには、在留資格「経営・管理」が必要です。この在留資格は、事業所や資本金などの要件を申請の時点で満たしていなければなりません。海外にいながら事務所を借り、資金を払い込み、職員を雇うのは容易ではありません。

スタートアップビザでは、認定を受けた団体(外国人起業促進実施団体)が事業計画を確認し、その後の準備を管理・支援します。確認を受けた方には、在留資格「特定活動」(特定活動告示44号)が付与されます。

制度の根拠

区分内容
在留資格特定活動(平成2年法務省告示第131号の44号)
制度を定める告示外国人起業活動促進事業に関する告示(平成30年経済産業省告示第256号)
家族起業家の扶養を受ける配偶者・子は特定活動告示45号

特定活動告示44号で認められる活動は、事業所の確保などの起業準備と、それに付随して報酬を受ける活動です。事業を始めた後も、在留期間のうちは引き続きその事業を経営できます(風俗営業などの活動を除く)。入管庁の手続は出入国在留管理庁の「外国人起業家」のページにまとめられています。

どこでも使える制度ではない

スタートアップビザを使えるのは、実施団体が設けた枠の中だけです。2025年に国家戦略特区の制度と一本化されて国家戦略特区に限らず全国で使える制度になりましたが、実際には起業する地域の実施団体に申請します。

たとえば東京都の制度は、東京都内に事業所を設けて事業を始める方が対象です。都内に住んでいても、事業所を都外に置く予定であれば対象になりません。実施団体の一覧と各団体の案内は、上記の経済産業省のページに載っています。

2025年の2つの改正

スタートアップビザは2025年に2回改正されました。1月に国家戦略特区の制度と一本化されて最長2年となり、10月16日に要件が厳しくなりました。

特区制度との一本化と最長2年

2025年1月1日施行の告示改正で、国家戦略特区の「外国人創業活動促進事業」が経済産業省の外国人起業活動促進事業に一本化されました。「事業所の確保」と「事業の規模」の要件を満たすまでの猶予は、最長1年6か月から最長2年に延び、在留資格は特定活動(告示44号)に統一されています(内閣府・出入国在留管理庁「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業の全国展開について」)。

特区の制度で在留資格「経営・管理」を得て在留していた期間がある方は、その期間とスタートアップビザの期間を合わせて2年を超えることはできません(外国人起業活動促進事業に関する告示第5の6)。

2025年10月16日の要件の見直し

在留資格「経営・管理」の基準の改正に合わせて、スタートアップビザの要件も見直されました。主な変更は、事業の規模と申請者の経歴、日本に住むことの3点です(経済産業省「スタートアップビザ」要件見直し)。

項目見直し前現行
資本金等500万円以上となる見込み事業に使う財産の総額が3,000万円以上となる見込み
常勤職員資本金の代わりに2人以上の雇用でも可1人以上が従事する見込み(資本金等と両方必要)
経歴・学歴関連業務の実務経験3年以上、外国での関連事業の経営・管理1年以上、大学卒業相当以上の学歴などのいずれか経営・管理の経験1年以上、または修士相当以上の学位
日本への居住要件なし準備期間中、日本に住むこと

見込みの期限は、最初の申請では入国後(または在留資格の変更後)1年以内、更新のときは更新後6か月以内です。事業所を同じ期限までに日本に持つ見込みが必要な点は変わっていません。

改正の前後で、「経営・管理」に変わるときの基準も分かれます。改正前に確認証明書を受けた方は改正前の基準、改正後に受けた方は改正後の基準で審査されます(出入国在留管理庁「経営・管理」の許可基準の改正等について)。

経営管理ビザとの違い

スタートアップビザは起業を準備するための在留資格で、経営管理ビザは事業を経営するための在留資格です。スタートアップビザでは、事業所と事業の規模の要件を満たすまでに猶予があります。

比較項目スタートアップビザ経営管理ビザ
在留資格特定活動(告示44号)経営・管理
事業所・事業の規模1年以内(更新時は6か月以内)に満たす見込みでよい申請の時点で満たしている必要がある
申請者の経歴経営・管理の経験1年以上、または修士相当以上の学位経営・管理の経験3年以上、または修士相当以上の学位
日本語能力告示上の要件はない申請者か常勤職員がB2相当以上
実施団体の関与確認と毎月の面接があるなし
在留できる期間更新を含めて最長2年更新を重ねて続けられる
家族特定活動(告示45号)家族滞在

どちらを選ぶか

日本に住む協力者(共同経営者など)がいれば、会社の設立や事務所の契約を先に進め、最初から経営管理ビザを申請できます。協力者がいない方が、自分で日本に来て準備を進めたい場合は、スタートアップビザが選択肢になります。

会社の登記が終わる前に「経営・管理」を申請し(登記が完了していないときは定款などを出します)、入国後に設立を進める方法もあります。ただし「経営・管理」の在留期間は4か月などの短い期間になることもあり、その間に銀行口座の開設、事務所の契約、設立登記をすべて終えるのは容易ではありません。準備に時間がかかる事業では、最長2年のスタートアップビザのほうが余裕を持てます。

申請の要件

実施団体は、告示が定める7つの要件をすべて満たすかを確認します。実施団体が確認証明書を出したうえで、入管庁が在留資格を審査します。

要件内容
事業の分野日本(自治体が実施団体なら、その地域)の産業の国際競争力の強化と国際的な経済活動の拠点の形成に適切
計画起業準備活動の計画が適正かつ確実
事業の規模1年以内に常勤職員1人以上と、事業に使う財産の総額3,000万円以上の両方を満たす見込み
事業所1年以内に日本に事業所を持つ見込み
経歴経営・管理の経験1年以上、または経営管理か事業の分野の博士・修士・専門職の学位
期間特区制度の「経営・管理」で在留した期間と合わせて2年以内
居住準備期間中、日本に住む

常勤職員として数えられるのは、日本人、特別永住者、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の方です。「技術・人文知識・国際業務」や「留学」など、入管法別表第一の在留資格で在留する外国人は数えません。

申請では、起業準備活動計画に、起業活動の工程表、履歴書、入国後(日本で変更する場合は変更後)1年間の住居と滞在費を示す書類を添えます。経歴を示す書類(会社の登記事項証明書や学位の証明書など)も必要です。

東京都で確認される点

東京都のスタートアップビザに関するQ&Aでは、申請できない場合も示されています。

  • 申請者本人の持ち分が51%未満の事業(企業の出資が50%以上の場合など)
  • 子会社の設立を目的とする申請
  • 知人の会社を引き継ぐなど、新しく事業を始めるのではない場合
  • 経営に携わらず、従業員として加わる方

残高証明は、原則として申請者本人のものが必要です。共同出資者がいる場合は、その方の残高証明と出資する旨の説明書面を添えます。

東京都での申請の流れ

東京都で申請する場合は、東京都の確認、入管庁の審査、入国の順に進みます。東京都の確認証明書には3か月の有効期間があり、その間に入管庁へ申請します。

  1. 東京都に起業準備活動計画の確認を申請する: 申請書・起業準備活動計画書・履歴書などを、日本語か英語で作り、ビジネスコンシェルジュ東京にメールで送ります
  2. 東京都の確認を受ける: 東京都は書類を確認し、必要に応じて質問や面接をします。事業の経営に詳しい有識者の意見を聞いたうえで、要件を満たせば確認証明書を交付します
  3. 入管庁に申請する: 確認証明書の有効期間(3か月)のうちに、在留資格認定証明書の交付を申請します。申請先は東京開業ワンストップセンター内の入国管理ブースか、東京出入国在留管理局です
  4. 査証を受けて入国する: 在留資格認定証明書が届いたら、海外の日本大使館・総領事館で査証(ビザ)を申請し、来日して在留資格「特定活動」の許可を受けます
  5. 東京都に報告して準備を始める: 在留資格を受けたら、在留カードの写しを添えて東京都に報告し、起業準備活動を始めます

東京都が対象とする事業は、金融、情報、環境・エネルギー、健康・医療・福祉、文化・芸術、食品・農林水産、卸売・小売、その他知事が認める産業です(東京都外国人起業活動促進事業実施要項)。

東京都の確認には、書類に不備がなければ1〜2か月程度かかるとされています(2026年10月時点の東京都Q&A)。確認証明書が交付されなかった場合、理由は開示されません。

確認証明書は入管庁の審査で重要な資料になりますが、在留資格が必ず認められるわけではありません。入管庁の審査は別に行われます。

申請書類を出せる人

東京都への申請書類は、申請者本人のほか、届出をした弁護士・行政書士なども出せます。申請者が国外にいる場合、弁護士・行政書士が出せるのは、日本での事業所の設置について申請者から委託を受けているときです。

手続の詳細と様式は、東京都の「スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)」のページで確認できます。

すでに日本にいる方が変更する場合

すでにほかの在留資格で日本にいる方も、実施団体の確認を受ければ、在留資格「特定活動」への変更を申請できます。流れは海外からの申請と同じで、入管庁への申請が在留資格変更許可申請に変わります。

東京都で変更する場合の注意点は次のとおりです。

  • 住居を示す書類として、住民票と在留カード両面の写しを出します
  • 「留学」から変わる場合は、在学中で、卒業予定の3か月前までに東京都へ申請します
  • 変更の申請は東京出入国在留管理局で行います。東京開業ワンストップセンターの入国管理ブースでは変更の申請はできません
  • 「特定活動」に変わると、主な活動は起業準備と経営に限られ、学業を続けることは難しくなります

変更の申請中に今の在留期間が満了しても、処分が出るまで(最長で満了日から2か月を経過する日まで)は、今の在留資格のまま日本に在留できます(入管法20条6項。在留期間が30日以下の方を除く)。それでも、在留期限に余裕をもって申請することが大切です。

スタートアップビザの期間中、起業準備に付随する範囲を超えて働く(アルバイトなど)ことは、原則として認められません。東京都は、生活と準備に必要な資金があらかじめ確保されていない場合は確認が難しくなるとしています。

在留中の確認と更新

スタートアップビザの在留中は、実施団体が少なくとも月に1回、準備の進み具合を確認します。東京都では、面接(対面またはオンライン)のうち少なくとも1回は対面で行います。

面接では、事業所や従業員の契約書、取引先との契約書、預貯金通帳などの提出を求められることがあります。実施団体は、その結果を経済産業大臣と地方出入国在留管理局に報告します。

最初の在留期間は1年または6か月で、その後は6か月ごとに在留期間の更新を申請します。更新の前に、実施団体から確認証明書(更新用)を受ける必要があります。

更新の確認では、更新後6か月以内に「経営・管理」の要件を満たす見込みがあるかが見られます。東京都は、更新を前提にせず、当初の在留期間のうちに起業準備を終えることを勧めています。入管庁も、通算2年を超えないよう余裕をもって申請するよう案内しています。

経営管理ビザへの移行

スタートアップビザの期間中に在留資格「経営・管理」の基準を満たし、在留資格の変更を申請します。2025年10月16日以降に確認証明書を受けた方には、改正後の基準が適用されます。

改正後の主な基準は次のとおりです。

  • 常勤職員: 日本人・永住者などの常勤職員を1人以上雇う
  • 資本金等: 3,000万円以上
  • 日本語能力: 申請者か常勤職員のいずれかが、B2相当以上(JLPT N2以上など)
  • 経歴: 経営・管理の経験3年以上、または経営管理か事業の分野の博士・修士・専門職の学位
  • 事業計画書: 中小企業診断士・公認会計士・税理士の確認を受ける
  • 事業所: 事業の規模に合った事業所を確保する(自宅との兼用は原則として認められない)

経歴の「3年」には、スタートアップビザでの起業準備活動の期間も含まれます。経営・管理の経験が1年で入国した方は、準備期間を足して3年に届くかを早めに確かめておくと安心です。

改正の内容と経過措置は、経営管理ビザの改正の記事で詳しく説明しています。

期間内に移行できなかった場合

準備の継続が難しくなった場合や、「経営・管理」への変更が認められなかった場合は、原則として帰国することになります。東京都は、帰国の旅費を事業資金とは別に確保しておくよう求めています。

日本の大学などを卒業してすぐにスタートアップビザを使った方には、要件を満たせば、別の「特定活動」で起業活動を続けられる場合があります(本邦の大学等を卒業した留学生が起業活動を行う場合)。就労系の在留資格の要件を満たす方は、その在留資格への変更も考えられます。

かかる期間と手数料

全体の期間は、実施団体の確認、入管庁の審査、日本での準備の3つで決まります。準備期間は最長2年ですが、東京都は当初の在留期間のうちに準備を終えることを勧めています。

入管庁の審査にかかる期間は、在留資格と手続の種類ごとに在留審査処理期間として公表されています。在留資格の変更・更新の手数料は、出入国在留管理庁の手数料のページで確認できます。

会社の設立にかかる費用は、会社の種類や資本金の額によって変わります。税務・会計の具体的な判断については、税理士等の専門家にご確認ください。

当事務所のサポート

当事務所は、スタートアップビザの準備から経営管理ビザへの移行まで、一貫してお手伝いいたします。

  • 制度が合うかの確認: 経歴・資金・事業の内容から、スタートアップビザと経営管理ビザのどちらが合うかを整理いたします
  • 起業準備活動計画の作成支援: 実施団体に出す計画書・工程表・資金計画を、確認の観点に沿って整えます
  • 入管庁への申請: 在留資格認定証明書の交付申請、在留資格の変更・更新の申請書類を作成し、提出を取り次ぎます(取次ぎができるのは、ご本人か代理人が日本に滞在している場合です)
  • 日本にいる方の変更: 「留学」や就労系の在留資格からの変更について、時期と手順をご案内いたします
  • 経営管理ビザへの移行: 改正後の基準に照らして不足を洗い出し、変更の申請まで準備いたします

起業の計画が固まる前でも、まずはお気軽にご相談ください。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案について法的助言を行うものではありません。

本記事は2026年10月11日時点の法令・公表情報に基づいています。改正や運用の変更があるため、申請の際は最新の情報をご確認ください。

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